盗塁王とは？スタメンより代走が有利!!【シミュレーションで検証】

⓪本記事の3行要約

• シミュレーションから盗塁王獲得に最適な打順を明らかにしたい。
• 2021年度ソフトバンクの打順別先発出場選手成績から盗塁機会数を計算した。
• 代走として出場したほうが盗塁機会を確保できた。

➀盗塁王について

-(1)盗塁王とは

　盗塁王とは、シーズンで最も多くの盗塁数を記録した選手が獲得するタイトルです。これはNPBにおけるシーズン表彰の打撃部門に含まれていますが、走塁のプレーに関するタイトルです。そのため、規定打席に達していない選手であってもタイトルを獲得することができます。

-(2)スタメンか代走かという問題

　このとき、スタメンか代走のどちらで出場したほうが盗塁王を獲得しやすいのでしょうか。基本的にはスタメンとして活躍した選手が盗塁王を獲得することが多いです。しかし、ロッテの和田選手は盗塁状況の代走として2021年度に24打席しか記録していませんが盗塁王を獲得しています。

-(3)本記事の方向性

　本記事では、モンテカルロシミュレーションから盗塁できる状況の数を計算することによって、どのような打順が特定の選手に盗塁機会を集中させることができるのかを分析します。そして、ソフトバンクの周東選手に盗塁機会を集中させることで盗塁王を獲得させることのできる打順を明らかにします。

➁モンテカルロシミュレーション方法

-(1)シミュレーションによる得点算出法

　本記事では、乱数によって打席結果を決定させるモンテカルロシミュレーションを用いて分析を行います。この算出法の大枠については過去の記事にて解説したためここでは触れませんが、次の仮定のもとで野球を疑似的にシミュレーションしている点に留意する必要があります。

-(2)シミュレーションの改善点

　大まかには野球を野球盤のように捉えたモデルであり、現実の競技とは大きくかけ離れた内容となっている点に注意が必要です。なお、ここでは2塁走者が単打で生還する確率を60％と仮定することにより、『野球のOR』や野球盤の再現において生じた2塁走者の扱いによるバイアスを解消しようと試みています。

[仮定]

• 打席結果は表1の6種類のみで成績に従って確率的に決定される。
• 走塁は打席結果のみに従い、表1のとおりに対応する。
• 2塁走者が単打で生還する確率pは0.6である。
• 以上の仮定で想定されないプレー(盗塁・失策等)は無視する。

※『野球のOR』における期待得点と得点確率の算出法の解説はこちら 

・ブログ記事：野球盤をモンテカルロシミュレーションとして再現する。

・公開コード：Google Colaboratory「野球盤をモンテカルロシミュレーションとして再現する。」

③シミュレーション結果

-(1)分析方法

　ここでは、2021年度のソフトバンクにおける打順別先発出場選手成績をもとに、8・9イニングのシミュレーションをそれぞれ28600試合行いました。そして、それぞれの打順における打点・出塁時の塁状況を計算しています。

-(2)一部シミュレーションの割愛

　このとき、ソフトバンクの打順別先発出場選手成績を打順のベースとし、各チームにおいて調整を施しています。例えば、1番周東チームでは1番打者を周東選手と入れ替えてシミュレーションしています。なお、周東選手が3~6番打者として起用されることはあまり現実的ではないため、本記事ではその場合のシミュレーションを割愛させていただきます。

-(3)シミュレーション結果

　その結果をまとめたものが次の表2・３です。これによると、1番打者として起用されたときが最も多くの盗塁機会を得ています。しかし、1番打者時であっても143回の盗塁機会が確保できていないため、周東選手においては代走として起用された方が多くの盗塁機会が得られると考えられます。

④おわりに

　本記事では、モンテカルロシミュレーションを利用してソフトバンクの周東選手が盗塁王を獲得するために最適な打順を分析しました。その結果、スタメン出場するならば1番打者として起用されるべきですが、代走として起用された方が盗塁機会を確保できることが明らかとなりました。

☆Pythonコード・計算の詳細はこちら
　⇒Google Colaboratory「SB周東が盗塁王を獲得するための最適打順構成」