⓪本記事の3行要約
- OPSの計算法や有意性を解説する。
- 出塁率と長打率の最適比率を検証する。
- OPSランキングの問題点を指摘する。
➀OPSについて
-(1)OPSとは
OPS(オプス)とは打者の打撃能力を評価する指標の一つです。日本で一般に知られ始めたのはここ10年ですが、米国では2000年代から親しまれてきました。その計算方法はとても単純で次のように求まります。
なお、出塁率と長打率は次のように求まります。
・出塁率 | = | 安打数+四球数+死球数 | |
打数+四球数+死球数+犠飛数 |
・長打率 | = | 単打数+2×二塁打数+3×三塁打数+4×本塁打数 | |
打数 |
-(2)OPSはなぜ利用されるのか
OPSはセイバーメトリクスを支持する人々によって高く評価されており、現在では主要な打撃指標として用いられています。では、それは一体なぜなのでしょうか。ここでは、古典的な打撃指標である打率と本塁打数とOPSを比較することでその有意性を解説します。なお、ここでは2005年~2021年のNPBにおけるチーム打撃成績を用いて分析を行います。
まず、得点と打率・本塁打の関係を表したものが図1・2です。これによると、打率や本塁打数は得点と正比例しているようです。そこで、得点を打率・本塁打数によって単回帰分析した結果をまとめたものが表1です。これによると、確かに打率や本塁打の数値が大きくなるほど得点が大きくなる傾向がありますが、決定係数(R²)は0.5ほどであり説明能力は大きくありません。
では、OPSは得点とどのような関係があるのでしょうか。OPSと得点の関係をまとめたものが図3です。これによると、得点とOPSは正比例の関係にありそうです。そこで、得点をOPSによって単回帰分析した結果をまとめたものが表2です。これによると、確かにOPSが大きくなるほど得点が大きくなる傾向がみられるだけでなく、決定係数も0.8と高い説明能力が認められます。
つまり、打率や本塁打数よりもOPSの方が得点との関連が強く、優秀な打者をより的確に示すことができるのです。
-(3)本記事の方向性
では、このときOPSは最も優れた打撃指標なのでしょうか。実際にはOPSは正確性と簡単さを兼ね備えた利便性の高い打撃指標ではあるものの、正確性にさらなる改善の余地があるといわれています。そこで、本記事ではNPBのチーム別打撃データを用いた重回帰分析によって、より正確に打者の能力を評価できる長打率と出塁率の比率を明らかにします。
➁出塁率と長打率の最適比率
-(1)OPSの問題点
OPSは出塁率と長打率の単純な足し算で求まるため、シンプルで利用しやすい指標です。しかし、このとき出塁率と長打率は本当に対等な価値をもつのでしょうか。実は、多くのセイバーメトリシャンはOPSを過度に長打率を重視した打撃指標であると認識しています。つまり、最適な出塁率と長打率のウェイトは1:1ではないと考えられているのです。
-(2)検証方法
③検証結果
④選手の正しい評価
-(1)正確なOPS
-(2)より良い評価方法
OPSは出塁率と長打率に関する回帰分析により、各プレーの価値をウエイト付けしました。しかし、この方法では各プレーの価値に一定の制約が残ってしまいます。そこで、各プレーの得点換算した価値を用いることで打者の打撃能力を評価するwOBAという方法があります。すでに米国ではこの方法も一般的になりつつあるようです。
⑤おわりに
本記事では、古典的な打撃指標に対するOPSの有意性を回帰分析から解説したのちに、OPSの抱える出塁率と長打率の最適ウェイトの問題を重回帰分析から説明しました。そして、OPSと最適化されたOPSのギャップからOPSの数値で選手能力を評価することは問題ありませんが、ランキングの順位で選手能力を評価することは問題であることが明らかとなりました。
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