ラッキーセブンは存在する?実はトイレタイム‼【シミュレーションで検証】

  西武がキャンプを行う南郷中央公園のサブグラウンドの様子です。掘り下げて造成されており見通しが良いため非常に好きな光景です。

⓪本記事の3行要約

  • シミュレーションからラッキーセブンの存在を検証したい。
  • 2021年度各球団の打順別成績からシミュレーションを行った。
  • 攻撃面からラッキーセブンの存在を支持することはできない。

➀ラッキーセブンについて

-(1)ラッキーセブンとは

 ラッキーセブンとは、野球における7イニング目(7回表・裏)のことです。このイニングでは試合が大きく動きやすいといわれているため、幸運な7回ということでラッキーセブンと呼ばれます。このとき、試合が大きく動くとは逆転や勝ち越しといった得点の記録を指しています。

-(2)ラッキーセブンの要因

 では、なぜ7回は得点が記録されやすいといわれるのでしょうか。もしかすると、7回は良い打順が回ってきやすいイニングなのかもしれません。また、先発投手であれば疲労がたまった状態で3巡目の打者を相手するイニングであり、中継ぎ投手であればクローザー・セットアッパーから漏れた投手が登板するイニングです。これらの要因が影響して、7回には得点が記録されやすいのかもしれません。

-(3)本記事の方向性

 本記事では、モンテカルロシミュレーションによりイニング別の平均得点と得点確率を求めることで、7回にはどのような打順が回ってきやすいのかを分析します。そして、7回と他のイニングにおける平均得点・得点確率を比較することでラッキーセブンの存在を検証します。


➁モンテカルロシミュレーション方法

-(1)シミュレーションによる得点算出法

 本記事では、乱数によって打席結果を決定させるモンテカルロシミュレーションを用いて分析を行います。この算出法の大枠については過去の記事にて解説したためここでは触れませんが、次の仮定のもとで野球を疑似的にシミュレーションしている点に留意する必要があります。

-(2)シミュレーションの改善点

 大まかには野球を野球盤のように捉えたモデルであり、現実の競技とは大きくかけ離れた内容となっている点に注意が必要です。なお、ここでは2塁走者が単打で生還する確率を60%と仮定することにより、『野球のOR』や野球盤の再現において生じた2塁走者の扱いによるバイアスを解消しようと試みています。

[仮定]

  • 打席結果は表1の6種類のみで成績に従って確率的に決定される。
  • 走塁は打席結果のみに従い、表1のとおりに対応する。
  • 2塁走者が単打で生還する確率pは0.6である。
  • 以上の仮定で想定されないプレー(盗塁・失策等)は無視する。

各打席結果と打者の出塁・走者の進塁がどのように対応しているかを示した表です。2塁走者が単打時に確率pで生還する野球盤を想像して頂ければわかりやすいかと思います。

※『野球のOR』における期待得点と得点確率の算出法の解説はこちら


③シミュレーション結果

-(1)分析方法

 ここでは、2021年度各球団の打順別先発出場選手成績を用いて28600試合のシミュレーションをそれぞれ行いました。そして、各イニングにおける平均得点と得点確率を計算しました。

-(2)シミュレーション結果

 その結果をまとめたものが次の表2・3です。これによると、7回の平均得点・得点確率は全イニングの平均を下回っており、他のイニングと比較しても小さい部類に入る傾向がみられます。つまり、試合はほとんど動かないイニングであるということです。

2021年度のNPB各球団におけるイニング別の平均得点を示した表です。なお、この計算結果はグーグルコラボのリンクからも確認できます。
2021年度のNPB各球団におけるイニング別の得点確率を示した表です。なお、この計算結果はグーグルコラボのリンクからも確認できます。

-(3)ラッキーセブンを否定する裏付け

 しかし、これは驚くべき結果ではないでしょう。仮にチームの出塁率が0.33であるとすれば、6回の攻撃終了時までに走者が6人期待されます。つまり、ここで併殺や盗塁死などを無視するならば、7回の攻撃は平均的に7番打者から始まるため得点は期待できません。

-(4)シミュレーションの限界

 また、モンテカルロシミュレーションの分析には偶然に極端な結果が得られる可能性があるため、今回の分析が偶然の産物である可能性を否定できません。そのため、チームとイニングの細かな傾向についてはあまり意味を持たないと考えてよいでしょう。

-(5)実際の得点数

 さいごに、2021年度のNPBで実際に記録された得点数を確認してみましょう。表4はNPB各球団におけるイニング別の平均得点をまとめたものです。なお、ここでは9回の正確なイニング数を入手できなかったため、ホームセーブ時以外には3アウトが記録されているものとして計算しています。

 これによると、7回の平均得点は全イニングの平均値を上回っています。しかし、これは9回の平均得点が著しく低いことが原因です。各イニングにおける平均得点を見ると、7回の順位は6位で決して高くはありません(この項目は順位の平均ではありません)。

2021年度のNPB各球団におけるイニング別平均得点をまとめた表です。これによると、7回の平均得点がそこまで高くないことが分かります。


④おわりに 

 本記事ではモンテカルロシミュレーションを利用して、2021年度各球団におけるラッキーセブンの存在を検証しました。その結果、7回は試合の動かないアンラッキーなイニングであることが分かりました。よって、攻撃面からの分析ではラッキーセブンの存在を支持することができませんでした。


☆Pythonコード・計算の詳細はこちら

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