⓪本記事の3行要約
- シミュレーションからラミレス監督の8番投手理論を検証したい。
- 8番と9番を入れ替えたチームで対戦をシミュレーションした。
- ラミレス監督の8番理論は投手理論は有効であった。
➀ラミレス監督の8番投手理論とは
-(1)8番投手理論とは
8番投手理論とは、DeNAのラミレス前監督が唱える最適打順構成理論の一つです。これは、2017年度シーズンにおけるほとんどのスターティングオーダーとして採用された打順であり、ユニークな打順構成だと大きな話題となりました。具体的には、一般的には9番に入ることの多い投手を8番打者として起用し、逆に8番に入ることの多いような打力の低い打者を9番打者として起用します。
-(2)本記事の方向性
本記事では、9番打者が投手であるチームと8番打者が投手であるチームによる試合をモンテカルロシミュレーションによって再現することで、この打順構成が本当に有効であるのかを分析します。
➁モンテカルロシミュレーション方法
-(1)シミュレーションによる得点算出法
本記事では、乱数によって打席結果を決定させるモンテカルロシミュレーションを用いて分析を行います。この算出法の大枠については過去の記事にて解説したためここでは触れませんが、次の仮定のもとで野球を疑似的にシミュレーションしている点に留意する必要があります。
-(2)シミュレーションの改善点
大まかには野球を野球盤のように捉えたモデルであり、現実の競技とは大きくかけ離れた内容となっている点に注意が必要です。なお、ここでは2塁走者が単打で生還する確率を60%と仮定することにより、『野球のOR』や野球盤の再現において生じた2塁走者の扱いによるバイアスを解消しようと試みています。
-(3)対戦のシミュレーション方法
さらに、ここでは2チームを対象に9イニングのシミュレーションを行うことで得点を計算し、その総得点数が高いチームを勝利チームとすることで試合を疑似的にシミュレーションしています。このとき、この方法では実際には行われないイニング(ホームチームリード時の9回裏)もシミュレーションしているため、打点数においてバイアスが発生することに注意する必要があります。
[仮定]
- 打席結果は表1の6種類のみで成績に従って確率的に決定される。
- 走塁は打席結果のみに従い、表1のとおりに対応する。
- 2塁走者が単打で生還する確率pは0.6である。
- 以上の仮定で想定されないプレー(盗塁・失策等)は無視する。
※モンテカルロシミュレーション方法の解説はこちら
③対戦結果
-(1)対戦方法
ここでは、DeNAの2017年度打順別先発出場選手成績を用いて143000試合のシミュレーションを行いました。なお、このシミュレーションでは実際の打順における8番と9番を入れ替えたチーム(9番投手のチーム)とラミレスチーム(8番投手のチーム)の2チームに総得点を競い合わせます。その結果をまとめたものが以下の表2・3です。
-(2)シミュレーション結果
これによると、8番投手理論に従う打順を導入することによってわずかに総得点数が増加し、少しだけ元の打順よりも勝ち越せるチームになりました。そのため、ラミレス元監督の提唱する6番最強打者理論はほとんど効果が無い可能性が高いですが、少なくとも現状の打順よりも有効である可能性も十分に認められます。
-(3)シミュレーションの限界
しかし、モンテカルロシミュレーションの分析には偶然に極端な結果が得られる可能性があるため、今回の分析が偶然の産物である可能性を否定できません。そのため、将来的にはモンテカルロシミュレーションに頼らない分析から8番投手理論を検証する必要がありそうです。
④おわりに
-(1)まとめ
今回はモンテカルロシミュレーションを利用して、2017年度DeNAにおける8番投手理論の検証を行いました。その結果、8番投手理論に従う打順ではシーズン総得点数がわずかに増加し、勝利確率もほんの少しですが上昇しました。よって、8番投手理論はほとんど効果の無いともいえますが、少なくとも現状の打順よりも有効な打順構成です。
-(2)今後の展開
しかし、この分析結果が偶然である可能性を否定できません。そのため、将来的にはモンテカルロシミュレーションに頼らない分析から8番投手理論を検証したいと思います。
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